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多目的な性能を同時に満足させることができる設計ツール「セットベースデザイン」による製品設計期間の大幅短縮

資料

多目的な性能を同時に満足させることができる設計ツール「セットベースデザイン」

組織名 NPO法人セットベースデザイン研究会(電通大発ベンチャー)
技術分野 ものづくり
概要

自動車などの設計では、燃費性能向上のために軽量化したいが、安全性は保ちたいといった複数の要求を満たす性能が求められ、それらの要求を同時に実現する設計をするために多くの試作や設計に時間がかかっています。この問題の解決のため、多目的最適化手法も存在しますが、解析精度向上の観点からくる工数の多さや、様々な不確定性の表現の難しさなどが指摘されており、充分な問題解決はできていません。セットベースデザイン設計手法は、複数の要求同士が時には背反するなど影響し合うことを考慮した上で、これらを同時に満足させる各性能範囲を導き出す手法です。この手法は、製品設計だけではなくサービスなどにも応用でき、また、人間の感性といった定量的な要素も性能のひとつと捉え、取り組むことができます。

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【簡略図】

【背景】

様々な製品やサービスの設計において、設計者には多くの要求を満たす複数の性能を満足させる最適設計が求められます。しかしながらそれぞれの要求はお互い影響しあい時には背反するものもあり、それぞれの要求性能を満たす全体的に最適な設計をすることは難しく、何度も繰り返して試作や実験を行うなどして、製品やサービスの設計には多くの時間が費やされています。
今回提案するセットベースという手法の概念は、1990年代にミシガン大学の研究者アレン・ウォードにより提唱されトヨタ自動車が「リーン製品開発方式」として取り組んだもので、上記のような多くの要求性能を満たす候補群としてとらえ、開発工程のなるべく遅い時期まで候補群からの選択を遅らせることによって多目的な要求性能を確実に実現する解候補を導き出す手法ですが、当時は具体的な開発ツールとしての開発はされていませんでした。
セットベース設計手法は電気通信大学名誉教授 石川晴雄氏により研究され、企業で利用できる設計ツールとして実用化され多くの業界で応用されてきました。更に今回、電気通信大学発ベンチャーNPO法人セットベースデザイン研究会は、より多くの業界で応用できる汎用ツールとして普及促進しています。

【技術内容】

🔳セットベース設計の概要
セットベース設計手法は、初期設計の段階で様々な不確実性がある中での性能を範囲としてとらえ、複数の要求性能を満たす実現性の高い範囲、更には最も望ましい範囲を絞りこんでいく手法です。主に次のような特徴があります。

1.複数の性能を同時に満たす製品やサービスの設計に適しています。例えば自動車などの多くの機能が複合的に含まれる装置の初期設計の時にも適しています。
2.設計値は範囲で出力されるので、後工程で設計変更を行う際にも出力された範囲の中で行うことで、他の性能の適正値内で変更を行うことができます。
3.本手法は範囲で設計値を扱うため、ロバスト性も考慮することができます。
4.仮に目標とする多目的性能を満たす設計解がない場合は、解がないことがすぐに判明します。
5.上記の処理はパソコン環境で、かつ比較的短時間で実行できます。

🔳設計のプロセス
セットベース設計手法を応用するには、電気通信大学で開発され、現在NPO法人セットベースデザイン研究会で普及活動をしている汎用的な設計ツールを活用することができます。本ツールでは次のようなステップで最適化設計(正確には満足化設計といいます)を行うことができます。

1,性能目標と、性能目標に影響する因子(設計変数)を確認
設計したい対象・課題の性能目標と設計変数を入力します。例えば材料設計の場合には、以下のような性能目標と設計変数が考えられます。
例)複合繊維材料の設計
性能目標:強度、弾性率、重量、コスト など
設計変数:繊維分量、繊維サイズ、処理温度 など

2.それぞれの性能において特に重要視するものの重みづけ(選好度)を設定
設定した性能目標と設計変数の範囲の中で、更に特に重要視する特性を設定します。

選好度の設定

3.性能と設計変数を表す関数を作成する。
セットベース設計ツールには、ユーザーが設計したい内容に応じて性能と設計変数の間の適切な関係式があてはめられるよう、様々な関数が用意されています。ユーザーは設計したいものの性能を表現するのに適した関数を選択することができます。

選択できる関数の例

4.設計変数範囲の絞り込み
初期設定設計変数範囲から求まる可能性分布を選好度付きの要求性能の範囲と比較します。もしも可能性分布が要求性能の範囲から外れていたら、外れた部分が入らないように設計変数範囲を絞り込みます。

可能性分布と初期要求性能

この結果、以下のように、各性能毎に初期の要求性能に対して、多目的な最適(満足)設計を実現できる要求性能毎の範囲解が導き出されます。

初期要求性能と設計範囲解

【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】

・既存の多目的最適化手法は、範囲で解が出力されないため、例えば開発途中での設計変更が余技亡くされる際には、再度、計算やシミュレーション等をやり直す必要がありますが、本手法は解が範囲で出力されるため、設計変更にも対応しやすくなります。
・最適(満足)範囲を出力する手法なので、ロバスト性があり不確実な性能に対しても応用しやすい手法です。
・応用範囲が広く、機械設計、電気・電子設計や材料設計にとどまらず、例えば保険などのサービス設計などにも用いることができます。

【連携企業のイメージ】

新しい製品、サービスを設計する方、複数の性能や要素があるものをデザインする方などに貢献できます。

・機械、装置の設計部門の方
・新規材料開発(有機・無機材料、複合材料、触媒、塗料などにも応用できます)
・保険サービスの開発部門の方
・美容、エステのメニュー開発部門の方
・食品材料、香料、肥料などの開発部門の方

他にも様々な分野で活用できます。

【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】

・不動産の物件とテナントの最適マッチング
・吸音、遮音材料の設計
・複合材料の最適化のための条件出し
・アスファルト道路の性能とアスファルト素材や温度の条件出し
・おいしい食品と素材の種類・量
・電子回路におけるノイズフィルタ設計

【技術・ノウハウの活用の流れ】

基本的な導入までの流れは以下の通りです。

・ご面談
どのような設計に応用したいかご要望をお聞かせください。
・セットベース勉強会開催
企業内でのセットベース設計の勉強会を開催、またはNPO法人で開催する勉強会に参加していただくことができます。
・セットベース設計ツールでのトライアル
汎用的にご利用いただけるセットベース設計ツールでのトライアルができます。
・貴社への本格導入
セットベース設計ツールをご導入いただくことができます。
または、装置へ組み込んで応用したいなどのご要望があればご支援します。

まずはお問い合わせください。

【専門用語の解説】

・セットベース設計
初期設計から詳細設計までの段階を問わず、設計変数(性能に影響を与える因子))や性能(機能・精度・品質などの設計する上で実現したいもの)を範囲としてとらえ、複数の要求性能を同時に満たす許容範囲、および最良範囲を絞りこんでいく手法です。現状までのポイントベースとは対極にある概念です。
範囲で扱うことの概念は具体案を複数準備させるという意味で1990年代に提唱されていましたが、設計課題に関わる各種変数自体を集合(セット)として表現し、設計解範囲を求める具体的なシステムツールは開発されていませんでした。

・ポイントベース設計
現状までの各種シミュレーション、最適化、機械学習などの挙動をポイント(点)を基礎にして表現する考え方で、解析精度向上の観点からくる工数の多さやそれに伴う計算処理環境の大規模化、得られたポイント解の根拠の薄弱性、様々な不確定性の表現の難しさなども指摘されている。

・選好度
セットベース設計では設計変数や目的性能変数を範囲で表現するとともに、範囲内に選好性を示す無次元指標(選好度)の分布情報を与えています。この概念を用いることにより、設定された各種変数範囲内の部分集合の選好性(満足性)の評価が可能となり、背反性を有する場合も含めて複数の性能を同時に満足する部分集合範囲を求めることが可能になります。

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